2010年11月25日木曜日

“引き算+α?独自路線を歩む三菱の家電戦?

 三菱電機から今年発表された家電のラインアップを見てみると、これまでの最新家電の定説を覆す独自のものになっていることに気付かされます。除湿乾燥機やIHクッキングヒーター、炊飯器……そのどれもが、これまで搭載されていた機能を絞り、シンプルな作りになりました。

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 とはいっても、PB家電によくあるような“シンプルなデザイン”を売りにしているというわけではなく、基本機能に“ユーザー視点の利便性”というエッセンスが加味されているのが特徴です。つまり、高機能なもの、多機能なものへの進化ではなく、「引き算+α」とでも言ったらいいでしょうか。

●部屋干しの乾燥に的を絞った除湿乾燥機

 5月に発売された除湿乾燥機は、下写真を見ても分かるように前年モデルよりもグッとコンパクトですっきりとした印象を受けます。

 盛りだくさんの機能が搭載されていた前年モデルとは打って変わって、基本機能である「除湿」と、近年の夜家事スタイルによる洗濯物の部屋干しにも対応した「衣類乾燥」、浴室のカビを防ぐ「浴室カビガード」に絞ったシンプル設計に大変身。除湿した空気を温風と冷風で吹き分けることで、ちょっとした涼がとれる「スポット冷風」や、冬場の脱衣所などで活躍する「ヒーター機能」をなくしているのです。

 これでは一見、引き算だけかと思うかもしれませんが、ユーザーのニーズに合わせた「プラスα」がちゃんと加味されています。それは、部屋干しの衣類をより効率的に乾かすために、同社のエアコンや冷凍冷蔵庫でおなじみの赤外線センサー「ムーブアイ」を搭載したこと。洗濯物の位置と乾き具合を見極めるセンサー技術を使って、厚手の洗濯物や遠くに干した洗濯物を判別。そこを狙って乾いた空気を送ることで乾きムラをなくせ、20%の省エネになるということです。また、部屋干し特有のニオイが発生しにくいという特徴もあります。

 ムーブアイによってセンシングするのは簡単でも、それと連動して風を集中的に送り込む「新たなルーバーの機構」こそが開発者が一番苦心した点とのこと。得意とするセンサー技術を生かしつつ、「洗濯物を効率よく、なるべく早く乾かしたい」というユーザーの思いを具現化し、これまで梅雨時を中心とした季節家電と思われがちだった除湿乾燥機を、通年商品へとチェンジさせようとする熱意が感じられます。

 機能を絞ったためにボタンの数が減って操作性が向上したのはもちろんのこと、機能表示の文字もぐんと大きく見やすくなっているのもポイントです。

 今年度の除湿乾燥機の新製品の発売は各社とも4月中だった中、三菱は5月の連休明けにずれ込み、最後発となりましたが、加速的に売り上げが伸びて遅れを取り戻し、人気商品になったとのこと。“部屋干し対応”という明確なターゲットに加え、機能を絞ったことで前年モデルより2?3万円下げることが可能になり、それが消費者の購入を後押しする結果になったのではないでしょうか。

●ターゲットをシルバー層に絞った「らく楽IH」

 続いて注目したいのが、今年11月に発売予定のIHクッキングヒーター「らく楽IH」。昨今のIHクッキングヒーターは、3つのコンロのすべてがIHとなった「3口IH」という高級タイプもしくは手前2つがIHで、奥の熱源はラジエントヒーター(RH)という「2口IH+RH」の普及タイプという2極化が進んでいます。

 ところが、この「らく楽IH」は幅60センチのトッププレート内に、2つのIHのみを配置したまったく新しい形。三菱電機では「ノリをあぶったり、もちを焼いたりと、日本人の暮らしにはラジエントヒーターが欠かせない」と強調してきたのに、それをあえて取り去り、シンプルにしています。

 では、なぜこんな引き算をしたのでしょう? 

 それはターゲットをシルバー層に絞ったからです。火を使わないので衣類に燃え移るなどの心配がなく、室内の空気もクリーンに保てるIHクッキングヒーターは、高齢者向けの調理機器として注目度が高く、離れて暮らす両親のために子どもたちがリフォームなどを勧めるという声も多く聞きます。

 しかし、その一方でボタンが多く、多機能になったIHクッキングヒーターでは、シルバー層が使いこなせるかどうか不安なために、なかなか採用に踏み切れないという声があるのも事実。そうしたシルバー層への新たなコンセプトを持ったIHとして「2口IH」を登場させたということです。

 IH部分には直径25センチの大きなオレンジサークルを描き、鍋を置く位置が直感的に分かるようにし、鍋と操作部分を従来よりも5センチ離す設計にして、安心して操作できるようになっています。鍋の位置が少し奥に移動したために、片手鍋などを置いて使用する際にも、取っ手部分がトップテーブルからはみ出しにくくなり、何かの拍子に取っ手がひっかかって鍋をひっくり返す……といった心配もありません。

 次に、シルバー層のユーザーに向けての「プラスα」を見てみましょう。操作ボタンの文字の大きさを従来の1.8倍にしたり、「電源=1」「入?切=2」「火力=3」という番号を表示し、1→2→3の順番でボタンを押すだけで、操作ができる「ナンバーナビ」を採用したりしたところも分かりやすいですが、何といっても秀逸なのは「見まもりセンサーと音声ナビ」がついていることでしょう。

 高感度の人感センサーが本体の側面に付いていて、調理中に人がそばにいないことを察知すると「揚げ物調理中は安全のため、そばを離れないでください」などと音声ナビで知らせてくれる仕組みになっています。使う人に応じて、音量や話す速度の調整も可能です。

 先に述べたナンバーナビは、両親のために設置したIHクッキングヒーターの使い方について、離れたところに住む娘や息子が電話口で説明する時のことを想定して考え出されたものだとのことですが、こうした説明のしやすさは、販売店の担当者が「こんなに簡単ですよ」とアピールする際にもきっと役立つのではないかなと思います。

●デザイン性と味とを両立させた炊飯器

 最後に、8月1日に発売されたばかりのIHジャー炊飯器「炭炊釜」の新製品についても着目してみましょう。

 三菱電機の炊飯器といえば、10万円という高価格炊飯器の先駆けとなった「本炭釜」や、蒸気が出ない安全性とスクエアなデザインで評判となった「蒸気レスIH」がよく知られていますが、「炭炊釜」のシリーズは、最高級の炊飯器の下の“ミドルクラス”と言われる価格帯のもの。昨年モデルまでは、本炭釜には採用していなかった圧力IHの炊飯方式を採用し、三菱ならではの吸水方法「可変超音波吸水」などとの合わせ技で、好みの食感で炊き分けられるなど、独自の立ち位置にあった炊飯器でした。

 ところが、ニューモデルでは圧力炊飯をやめ、デザインも一新。「蒸気レスIH」を思わせるスクエアな形にしたうえに、奥行きを20%もコンパクトにしています。

 圧力炊きをやめ、コンパクトでシンプルなデザインに変更した「引き算」の炊飯器ですが、これはユーザーからの要望が多かった「キッチンのスライド棚にもすっきり収納できるもの」「オープンキッチンにもマッチするデザインのもの」という声を具現化した結果なのですよね。

 ただし、機能を省いてシンプル設計にしたわけではなく、高火力の連続沸騰を実現させるために、吹きあがるネバネバをキャッチするカートリッジ部分の構造を全く新しいものに変えています。蒸気レスではないですが、本体のデザイン性とご飯のおいしさの両立を実現。コンパクトでごはんをよそいやすい炊飯器になっていて、価格も本炭釜や蒸気レスIHよりも抑えられているという点で、ユーザーにとって、とても魅力のあるものになっています。

●“引き算+α”は明確なターゲット設定があればこそ

 多機能?高機能化が目立ち、魅力的に見えて購入した家電なのに、使いこなせずに宝の持ち腐れになってしまう……そうしたことがないようにと、あえて目指した“引き算+α”のもの作り。でもこれは、除湿乾燥機のターゲットを「部屋干しをする人」、IHクッキングヒーターのターゲットを「シルバー層」、炭炊釜のターゲットを「収納性&デザイン性を求める人」というように、明確なターゲット設定があればこそできるものなのだと思います。

 そうすることによって、これまで「どれも同じようで、どれを買っていいのか分からない」と思っていた人たちが、「これこそが私の欲しいものだった」のだと認識できるのですよね。よく聞かれる“他社との差別化”という言葉を具現化するには、思い切ってターゲットを絞り、必要な機能を見極めることが大切なのかもしれません。

 ……と、独自路線を歩んでいる三菱電機の家電を分析していたら、8月24日に2011年の家電戦略についての発表会があり、目指しているのは“使いやすさ革命”ということが明らかになりました。製品の高度化?多機能化だけでなく、最新の便利で高度な機能を使いこなせるようにという、ユーザー視点の中でも特にユニバーサルな視点に基づいた家電シリーズ展開について発表がなされたということです。その名も「らく楽アシスト」。先に紹介したらく楽IHは、その前哨戦とも言えるものだったのでしょうね。(神原サリー)


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